概要
Actionstep は、中規模法律事務所向けのクラウド型事務所管理ソフトウェアです。案件、連絡先、文書、ワークフロー、タイムチャージ、請求、預り金管理に加え、北米では法律事務所向けの完全な総勘定元帳まで備えています。2004 年に Auckland で創業し、2020 年 10 月から Serent Capital が過半数を保有しています。同社によれば、ニュージーランド、オーストラリア、英国、米国、カナダで約 5,000 事務所、約 50,000 ユーザーが利用しています。Clio や MyCase との違いはワークフローエンジンです。案件タイプごとに、手順、データ項目、自動タスクを設定可能なシーケンスとして組めます。だからこそ、タイムチャージで請求する弁護士が 20〜150 名いて複数の業務分野を持つ事務所が選び、だからこそ導入には午後半日ではなく数週間かかります。
2026-08-11、Actionstep は Actionstep Intelligence をリリースしました。別アプリではなく、プラットフォーム内に組み込まれた AI レイヤーです。最初に提供されたのは 2 つの機能です。AI による時間記録の Trace と、事務所自身のレポートについて質問に答える AI アシスタント付きの事務所向けダッシュボード Acumen です。検索、ワークフロー実行、MCP サーバーは 2026 年後半に提供予定とされています。2026-10-16 時点の確認では一般提供の MCP サーバーは発表されていなかったため、ここでは「未提供」としています。
Legal Ops スタックに登場する理由
- 案件タイプごとのワークフロー。 不動産取引、家事事件、企業間紛争は、それぞれ独自の手順、項目、文書テンプレートを持てます。Clio のより軽い案件モデルでは足りなくなった事務所は、たいていこの点を理由に挙げます。
- 時間記録がネイティブになりました。 Trace は、Actionstep が 2026 年 1 月に買収したパッシブ型時間記録スタートアップ Traced から生まれました。Outlook、Word、PDF、ブラウザでの作業を記録し、案件と請求コードに紐づけ、弁護士が承認するタイムエントリーの下書きを作成します。自動で請求書に載ることはありません。Actionstep は、弁護士 1 人あたり年間 25〜50 時間の請求可能時間を回収できたと報告しています(ベンダー公表値)。
- 会計機能は多くの競合より深いです。 2023 年に AffiniPay から買収し、2026 年に Actionstep Legal Accounting へ改称した Soluno が、総勘定元帳、買掛金、預り金会計を追加します。北米の事務所が別の法律会計システムを使わずに済みます。
- 実際に開発に使える API。 サンドボックス付きの文書化された REST API(docs.actionstep.com)があり、API レビューを経て OAuth の認証情報が発行されます。連携先には、Outlook アドイン付きの Microsoft 365、Xero、DocuSign、InfoTrack、Legl、First AML、Zapier が含まれます。
価格の実態
Actionstep は価格を公開していません。actionstep.com/pricing のすべての製品が「ユーザー単価+導入費用」で、Trace、Acumen、Builder(文書自動作成)、Capture(インテーク)は別料金のアドオンです。第三者の推計では、基本サブスクリプションはユーザーあたり月額約 $115 から(ITQlick)、導入費用は認定パートナーによるシンプルな導入で約 $3,000、複数の業務分野を持つ事務所では $10,000 以上です。25 名の事務所なら、AI アドオンを除いて初年度はおよそ $35,000〜45,000 を見込んでください(推計)。同じ事務所が MyCase Pro を公表年額料金の $100 で使えば年 $30,000 です。上乗せ分で買っているのはワークフローエンジンと会計機能であり、安いライセンスではありません。
最適な用途
オーストラリア、ニュージーランド、英国、北米の中規模事務所(タイムチャージで請求する弁護士がおよそ 20〜150 名)のマネージングパートナーやオペレーション責任者で、プロセスの異なる複数の業務分野を運営し、時間記録と事務所の分析を同じシステムで行いたく、ワークフロー設定を担当する人がいる場合に最適です。
向かないケース: 個人事務所や 10 名程度未満の事務所(使わない設定に費用を払うことになります)、大量案件を扱う原告側の人身傷害事務所、Aderant や Elite 3E を使う AmLaw 規模の事務所。
代替ツール
- Clio — 市場シェアのリーダーです。公開価格、同じ週での導入、最大の連携マーケットプレイスを求め、案件タイプごとのワークフローが不要なら選んでください。
- MyCase — もう一方の大手既存ベンダーで、現在は 8am MyCase です。パートナーによる導入なしに定価(ユーザーあたり月額 $50〜130)と組み込みの AI を求める小規模事務所に向いています。
- Filevine — 2025 年 9 月に $400M を調達した、このカテゴリーで最も急成長しているプラットフォームです。総勘定元帳の会計よりもテンプレート化された案件パイプラインが重要な、大量の訴訟業務や原告側業務に選んでください。
- Laurel または PointOne — 現在の事務所管理システムを使い続け、時間記録だけが必要なら、単体の AI タイムキーパーを選んでください。
- LEAP — オーストラリアと英国での主なライバルです。事務所管理と一緒に法律コンテンツや書式をまとめて使いたい場合に選んでください。
注意点
- 導入こそが製品です。 Capterra や GetApp のレビューでは、長い導入期間と急な学習曲線が繰り返し指摘されており、あるレビュー集約サイトは G2 の平均導入期間の見積もりを約 5 か月としています。対策: フェーズ 1 は 2〜3 種類の案件タイプに絞り、本稼働の基準をパートナーの statement of work に明記し、残りはフェーズ 2 に回してください。
- AI は別料金で、まだ初期段階です。 Trace と Acumen は価格非公開のアドオンで、検索、ワークフロー実行、MCP サーバーはまだ発表段階です。対策: 基本プラットフォームはそれ自体の価値で購入し、Trace は弁護士 5 名で 60 日間試験導入し、事務所全体に広げる前に回収時間を Laurel や PointOne と比較してください。
- 機能の深さは地域によって異なります。 Legal Accounting は北米のみで、他の市場では Xero などの会計連携を使います。対策: 自分の法域の預り金会計ルールでデモを行い、自分の地域で現在稼働している機能を確認してください。
- 価格が公開されていないため、見積もりにばらつきがあります。 対策: ユーザー単価、アドオン価格、導入費用を 1 通の書面見積もりで取得し、契約に更新時の値上げ上限 5〜7% を盛り込むよう求めてください。