概要
Intapp が売っているのは、そもそもファームがその案件を受任してよいかを判断し、その後ファーム内の誰がそれを見られるかを統制するレイヤーです。コンフリクトチェック、新規案件のインテーク、アウトサイドカウンセルガイドラインの管理、情報遮断壁、従業員コンプライアンスの申告、タイムキャプチャと請求 — さらにプライベートキャピタル側で使われるディール・リレーション CRM の DealCloud があります。同社は 2002 年に立ち上げたインテグレーション事業から生まれ、2021 年から NASDAQ に INTA として上場しています。顧客には Am Law 100 のうち 96 社、グローバル会計事務所上位 20 社のうち 16 社、そして 1,700 社を超えるプライベートキャピタル・投資会社が含まれます。
ここは ooligo のカタログが今まで押さえていなかった領域です。Harvey、Legora、Spellbook はプラクティスレイヤー、つまり成果物そのものを扱います。Intapp はその下にあり、どの弁護士がどの案件に触れてよいかを決めるファームガバナンスのレイヤーに位置します。そして 2026 年を、その位置を AI のコントロールポイントに変えることに費やしました。
動いたことが 3 つあります。2026 年 2 月 23 日、Intapp と Harvey は、Intapp Walls のポリシーが Harvey へ同期され、Assistant、Vault、共有ワークスペースで適用されること、権限が確認できない場合はアクセスを遮断し、適用の判断を双方に記録することを発表しました。この連携はクラウド版 Walls について 2026 年 7 月に GA に到達しています。翌日の 2 月 24 日、Intapp は Anthropic との協業を発表し、Intapp の統制された環境の中で Claude を用いた業種特化エージェントを構築するとしました。そして 2026 年 7 月 15 日、Intapp が「firm AI」と呼ぶエージェント型レイヤーの Celeste が、2 月のプレビューを経て GA に到達しました。インテークとコンフリクトでは BakerHostetler が、プライベートエクイティ側では Hg が早期採用企業として名指しされています。
Legal Ops のスタックに登場する理由
- コンフリクトチェックとリーガルインテークは 2 つではなく 1 つのシステムです。 Intapp Conflicts が検索と処理判断を回し、Intapp Intake がリスク質問票、承認フロー、AML と KYC の各ステップを担います。年に数千件の新規案件をクリアするファームは、クリアランスの記録とインテークの判断を同じ監査証跡に載せたい。クライアントのアウトサイドカウンセル監査が求めるのは、まさにその成果物だからです。
- AI ガバナンスが実際に適用される場所が Walls です。 Intapp Walls で一度定義したポリシーが、Harvey、Microsoft Copilot、Celeste にわたって効きます。代わりの道は、ラテラル採用のスクリーン、案件単位の制限、MNPI の統制を、ファームが買うすべての AI ツールの中に個別に作り直し、その継ぎはぎをクライアントに説明することです。
- Celeste が狙うのは書面ではなくファームの経営です。 プレイブック駆動のエージェントが、ディールスクリーニング、コンフリクトクリアランスの準備、ビジネス開発のリサーチ、プライシング、そして候補者調査からオンボーディングまでのラテラル採用サイクルを回します。案件管理とファーム戦略の間にある業務です。
- 数字は、ファームが更新するだけでなく拡張していることを示しています。 2026 年 3 月 31 日時点のクラウド ARR は 4 億 5,930 万ドルで前年同期比 31% 増、総 ARR の 82% を占めます。会計年度第 3 四半期の SaaS 収益は 1 億 790 万ドルで 27% 増。直近 12 か月のクラウド純収益維持率は 123% でした。
価格の実態
公開情報はありません。価格ページもモジュール別の料金表もなく、すべて営業経由の見積もりです。
開示されている顧客の階層が、誠実なアンカーになります。2026 年 3 月 31 日時点で、Intapp は ARR 5 万ドル超の顧客を 1,375 社以上、うち 10 万ドル超を 858 社と報告しました。最初の数字を実質的な入口として読んでください。中規模ファームでのモジュール 1 本は年間 5 桁ドルのコミットメントであり、既存顧客のおよそ 10 社に 6 社は 6 桁ドルを超えています。そこがモジュール 2〜3 本の水準です。このプラットフォームについて流通しているサードパーティの購買データは、モジュール数とファーム規模に応じて年間およそ 8 万 5,000 ドルから 140 万ドルというレンジを示しています。見積もりではなく推定値として扱ってください。ただし、その形は開示された階層と整合します。
金額を動かすのは人数よりもモジュール構成です。Conflicts、Intake、Walls、Terms、Time を別々の明細として出させ、Celeste はそれが読むモジュールとは切り離して見積もらせてください。
こんな組織に向く
弁護士がおよそ 150 人を超えるファームのリスク担当パートナー、法務部門、リーガルオペレーションの責任者。コンフリクトの見落としが恥ずかしい失敗ではなく存続に関わる事象であり、ラテラル採用の量がスクリーン管理を臨時の作業ではなく常設の職務にしている組織です。プラクティスレイヤーの AI を大規模に展開し、アクセスをどう統制しているのかとクライアントから問われ始めたファームにとっても最も強い選択肢になります。Walls はその問いに、ポリシー文書ではなく監査ログで答えるからです。
弁護士 30 人のファームには買わないでください。その規模なら、コンフリクトクリアランスは検索できる顧客データベースと顧客名簿を把握しているパートナーで足り、6 桁ドルの暗黙のプラットフォーム費用はリスク専門の人員 1 人分になります。Celeste をプラクティスレイヤーの AI の代替として買うのも避けてください。これはファームの経営を回すものであって成果物を作るものではなく、両者を混同したファームは両方に払って両方を活かしきれずに終わります。
代替候補との比較
Aderant は Roper Technologies の一事業で、信頼できる 2 番手です。問題の切り分け方が違い、Conflicts and Risk が Aderant Expert のプラクティスマネジメントの中に収まるため、コンフリクトの記録が請求の記録の隣に並びます。2026 年 5 月 11 日、Aderant は Stridyn プラットフォーム上で Agent Center を発表し、Collections、Appeals、Talent Evaluation の各エージェントを投入しました。Harvey とも独自に提携しています。すでに Expert を使っていて、財務とリスクをまたいでベンダーを 1 社にまとめたい委員会なら Aderant を選んでください。リスクとコンプライアンスが決め手であり、別のプラクティスマネジメントと並走させることを許容できるなら Intapp です。
iManage Security Policy Manager は情報遮断壁に特化した代替であり、対象範囲の狭さで勝ちます。ファームのコンテンツが iManage のリポジトリにあるなら、SPM はクライアント、案件、部門、拠点の各レベルの need-to-know をそのリポジトリに対して適用でき、プラットフォーム購入より統合の手間が小さくて済みます。DMS 内の文書セキュリティが問題のすべてなら、こちらを選んでください。壁が DMS を越えて AI ツール、タイムエントリ、CRM にまで届く必要があるなら Intapp Walls です。
Legora はリーガル AI で最も成長が速い新規参入者で、同じ仕事というより同じ予算枠を争います。2026 年 4 月に ARR 1 億ドル、2024 年末の 300 万ドルからの伸びで、2026 年 4 月 30 日に発表されたシリーズ D は 6 億ドル、ポストマネー評価額は 56 億ドルです。パートナーシップの不満がアソシエイトの遅さであってインテークの漏れでないなら、Legora を選んでください。両者は代替関係にありません。壁のポリシーなしに Legora を買ったファームは、次の監査指摘を買ったことになります。リーガル AI と legaltech の違いは、まさにこの「仕事をする」と「仕事を統制する」の分割です。
3 つのどれも合わないなら、問題はリスクを機能として担う人がいないことです。ソフトウェアはポリシーを適用しますが、ポリシーを書きはしません。ラテラルスクリーンの手順書がないファームが手にするのは、同じ曖昧さの高速版だけです。
注意点
- Celeste は GA から 1 か月未満で、名前の出ている導入事例は 2 件です。 インテークとコンフリクトの BakerHostetler、プライベートキャピタル側の Hg。自社のデータ量に対してどう振る舞うかについて、それ以外はベンダーの主張です。ガード: 最初の Celeste 購入は、測定できる時計を持つプレイブック 1 本に絞ってください。ラテラル採用のクリアランス所要時間が最も明快です。稼働前にベースラインを取り、3 年のプラットフォーム契約に組み込むのではなく、そのモジュールに 12 か月での離脱条件を交渉してください。
- Walls for AI が適用するのは、保持しているポリシーであって意図したポリシーではありません。 Harvey との同期は既存の Intapp Walls ポリシーを伝播させます。登録されなかったスクリーンや、インテークで誤って分類された案件は、接続されたすべての AI ツールで一斉に、誤ったルールを確信を持って適用する結果になります。ガード: 同期を有効化する前にポリシーデータを監査してください。稼働中のスクリーンを 20 件抽出し、それぞれを元の記録と突き合わせます。適用ログは、有効化して忘れる機能ではなく、担当者を決めた月次レビューにしてください。
- 価格はすべて見積もりで、自動更新が既定の姿勢です。 サードパーティの購買レポートは、削除が難しい自動更新条項付きの年間契約を報告しています。ガード: 更新通知期間と値上げ上限は、更新時ではなく最初の発注書で交渉し、モジュール別の明細を必須にし、通知期限を署名当日にカレンダーへ登録してください。
- AI は 2002 年由来のコンプライアンス基盤に後付けされており、フロンティアモデルは他社のものです。 Claude は Anthropic との協業から、プラクティスレイヤーの知能は Harvey から来ます。Intapp 自身の寄与はガバナンス、プレイブック、そしてファームのデータです。筋の通った立ち位置ですが、ロードマップが 2 つの提携に依存することも意味します。ガード: 契約開始日時点で自社テナントの Celeste のどの機能が GA なのかを確認し、リストを書面で入手してください。値付けはコンプライアンスモジュールを基準にし、エージェントは上振れ要素として扱います。
- 導入は四半期単位で進み、価値は署名後ではなく移行後に立ち上がります。 サードパーティの導入レポートは、単一モジュールでおよそ 8〜20 週間、プラクティスマネジメントと DMS の連携を伴う複数拠点展開で 3〜9 か月としています。ベンダーの確約ではなく推定値です。ガード: 購入を段階に分け、まず Conflicts と Intake、案件データが整ってから Walls とし、支払いマイルストーンはモジュールごとの稼働開始に紐づけてください。