概要
Manus は汎用の自律型エージェントです。「今年 CFO が交代した中堅規模の物流企業をすべて、出典付きでリストにして」のようなゴールを渡すと、手順を計画し、自前のクラウドコンピューター上でブラウザを開き、コードを書いて実行し、完成したファイルを返します。スプレッドシート、スライド資料、レポート、公開済みの Web ページなどです。ノートパソコンを閉じてもタスクは動き続け、どの有料プランでも最大 20 件を同時に実行できます。
開発元の Butterfly Effect は 2025 年 3 月に Manus をリリースし、同年夏に本社を中国からシンガポールへ移しました。Meta は 2025 年 12 月に約 20 億ドルで同社を買収しました。中国の国家発展改革委員会は 2026 年 4 月 27 日にこの取引の撤回を命じ、Meta は 6 月に関係を解消しました。その後、Tencent、ZhenFund、HSG を中心とする投資家が Meta から株式を買い戻し、Manus は 2026 年 9 月 1 日に独立企業として運営を再開しています。現在の筆頭株主は Tencent です。Caixin は 2026 年 6 月末時点の年間経常収益を 4 億ドルと報じていますが、この数字は独立した監査を受けていません。
2026 年 9 月 29 日にリリースされた Manus 2.0 では、イベント起点のタスク(メール、Slack のメッセージ、カレンダーの予定で実行を開始)、常時稼働のクラウドコンピューター、スマートフォンから自分のデスクトップを操作するリモートコントロールが加わりました。姉妹製品の Cue は、エージェントに専用のメールアドレス、電話番号、支出用ウォレットを持たせるもので、招待制です。
候補に挙がる理由
- 成果物まで仕上げる。 多くのアシスタントは回答で止まります。Manus は成果物そのもの、つまり整理済みのアカウントリスト、15 枚の競合ブリーフ、データルームの索引などを作ります。オペレーションチームが他の人に渡す必要があるのは、まさにこれです。
- Wide Research が並列で動く。 リスト作成の仕事(ターゲットアカウント 100 社、ベンダーのセキュリティページ 40 件、候補者プロフィール 60 件)では、Manus がサブエージェントに 1 件ずつ割り振り、最後に結果を統合します。単一のチャットスレッドが苦手とする仕事です。
- スケジュール実行とトリガー実行。 有料プランはそれぞれ 20 件のスケジュールタスクを持てます。2.0 では Gmail、Slack、Google Calendar、Notion からのトリガーが加わりました。毎週の競合価格チェックや月曜朝のパイプラインリスク要約が、誰もアプリを開かずに実行されます。
- オペレーション用途に足る拡張性。 標準コネクターは GitHub、Notion、Slack、Google Calendar をカバーし、カスタム MCP サーバーで社内システムに接続でき、API を使えば自社コードや自動化ツールからタスクを起動できます。
料金
公式料金ページ(2026 年 10 月 2 日確認)の個人プランは、月額 20 ドルで 4,000 クレジット、40 ドルで 8,000、200 ドルで 40,000 です。いずれも毎日 300 クレジットが補充されますが、繰り越しはできません。年額払いで 17% 割引になります。Team プランは 1 シートあたり月額 20 ドル(または年額 200 ドル)で、1 シートにつき 4,000 クレジットが共有プールに入り、SSO、管理ダッシュボード、監査ログが付きます。Manus は SOC 2 Type II と ISO 27001 への準拠を表明しています。
実際の価格を決めるのはクレジットで、その消費量は予測しにくいのが実情です。Manus 自身のヘルプセンターの例では、15 分のデータ分析チャートが 200 クレジット、25 分の Web ページが 360、80 分の Web アプリが 900 です。クレジットはモデルのトークン、仮想マシン、サードパーティ API 呼び出しで消費され、実行前にコストは提示されません。これらの例から見ると、4,000 クレジットのシートでこなせるのはタスクの大きさ次第で月 4〜20 件です。毎週リスト作成をする 5 人のオペレーションチームは 40 ドルのプランに上げるか追加クレジットを買うことになるので、予算はアクティブユーザー 1 人あたり月 20 ドルではなく 40〜60 ドルで見込んでください。
最適な用途
- ターゲットアカウントのリスト、競合ブリーフ、テリトリー調査を手作業で作っていて、チャットの記録ではなく完成したスプレッドシートが欲しい RevOps・マーケティングオペレーションのリーダー
- ベンダーのセキュリティページ、公開開示資料、規制動向の追跡といった定型的なデスクリサーチを定期実行したい Legal Ops・購買部門のアナリスト
- 公開データから人材マップや報酬ベンチマークを作る Recruiting オペレーションチーム
秘匿特権のある文書や規制対象の個人データに触れる業務には、セキュリティチームが株主構成の変更を承認するまで向きません(注意点を参照)。
代替ツールと選ぶべき場面
- ChatGPT のエージェントモードと Claude Cowork:市場シェアのトップ 2 で、多くの企業がすでに契約しています。タスクが 30 分未満で終わる場合、作業対象が手元のファイルにある場合、購買部門が新規ベンダーを追加しない場合はこちらを選んでください。Cowork の強みはローカルファイル上で動くこと、Manus の強みはクラウド上で長時間・並列・ブラウザ中心の処理を回せることです。
- Perplexity:作り込んだ成果物ではなく、出典付きの回答が必要なときに選びます。1 問あたりの速さとコストで勝ります。
- Lindy:単発の調査プロジェクトではなく、受信箱の振り分けや通話ごとの CRM 更新のような常設のワークフローなら Lindy です。エージェントがまずトリガーと連携を軸に設計されています。
- OpenClaw:データを自社管理のインフラに留める必要があるときに選びます。セルフホスティングにはエンジニアの工数がかかりますが、ベンダー継続性の問題そのものがなくなります。
- Manus 自体がこのグループで最も成長の速い新興勢力です。リリースから約 15 か月で、報道ベースの年間経常収益 4 億ドルに達しました。
注意点
- 9 か月で 2 度、所有者が変わっています。 本社をシンガポールに移した後で、中国の規制当局が Meta による買収を取り消させました。現在の筆頭株主は Tencent です。データは米国とシンガポールに保存されていますが、この一件は中国の規制当局が今も同社に影響を及ぼせることを示しています。対策:全社標準にする前に、9 月以降の新体制を対象にベンダーリスク審査をやり直し、2 つ目のエージェント(Cowork または ChatGPT)の契約を維持し、審査が終わるまで顧客の PII や秘匿特権のある法務資料を Manus に通さないでください。
- Manus はすでに一度ユーザーデータを削除しています。 2026 年 8 月 23〜24 日、対象アカウントで 2025 年 12 月 29 日以降に作成されたデータを、具体名を挙げない「特定の法域の規制要件」を理由に削除しました。エクスポート期限は 8 月 23 日のシンガポール時間 07:59 でした。対策:Manus は記録システムではなく作業スペースとして扱い、成果物はその日のうちに自社のドライブや CRM へエクスポートし、タスク履歴の月次エクスポートを予定に組み込んでください。
- クレジット消費は実行後まで見えません。 範囲の広い Wide Research タスク 1 件で月間割り当ての大部分を使い切ることがあり、事前の警告はありません。対策:20 ドルのプランで 2 週間試し、利用状況ダッシュボードでタスク種別ごとのクレジット消費を記録し、全社展開の前に Team プランで自動購入の上限を設定してください。
- 自律性とは、レビューされない操作のことです。 ブラウザ、コネクター、そして(Cue では)自前のウォレットを持つエージェントは、送信・提出・支出ができてしまいます。対策:まず読み取り専用の権限で接続し、数週間にわたって出力を確認するまでは CRM とメールへの書き込みを無効のままにし、業務用途では Cue の支出機能を有効にしないでください。