何をするものか
Darrow は公開データ、つまり規制当局への届出、裁判所の記録、行政機関への苦情、企業の開示資料、事故報告などを読み込み、ある企業の行為がすでに請求権を発生させている可能性が高い箇所を、原告が法律事務所の扉を叩く前に指し示します。創業は 2020 年 6 月、Evyatar Ben Artzi (CEO) と Gila Hayat (CTO)、そしてすでに退いた Elad Spiegelman によるものです。テルアビブを拠点に約 170 名、ニューヨークとマイアミにもオフィスを構えています。
機能一覧よりもポジションが重要です。このカタログにある法務向け AI ツールのほとんどは、案件がすでに存在した後から動き出します。EvenUp は請求書面を作成し、Supio は医療時系列を組み立て、Filevine は案件ファイルを回します。Darrow はその 1 歩手前、そもそも事務所がどの案件に取り組むべきかという問いに位置します。Ben Artzi 自身の整理では、Darrow は川上で違反を検知する側であり、legal tech の大半は案件が生まれた後の業務効率という川下で動いています。
仕組みは、ニュースに向けた汎用モデルではなく、体系化された分類表です。Darrow の legal intelligence チームは、証券詐欺、独占禁止、消費者保護、環境法、プライバシー、労働・雇用、ERISA にまたがる 164 のコンプライアンス上の弱点を定義し、企業をその一覧に対して継続的に照合しています。
実際に手に入るもの
2026 年 5 月 12 日、ベンダーは個別ツールを 4 つの構成要素から成る 1 つのプラットフォームに統合しました。
- Case Discovery — エージェントが候補となる exposure を洗い出し、AmLaw 100 出身の元弁護士が事務所に届く前に精査します。各案件には推定クラス規模、損害額の見積り、想定弁護士報酬、和解までの期間、被告の売上高が付きます。
- Case Evaluation — 根拠となる証拠と手続書面を含む案件メモに加え、連邦・州の裁判所から集めた類似案件の分析。
- Portfolio Management — 和解額、事務所の想定純収入、手続段階、原告の獲得状況、資料収集の進捗をポートフォリオ全体で追うダッシュボード。
- Embedded Intelligence — 案件の見込み、被告の履歴、評価額、先例について問い合わせるためのチャットレイヤー。
旧来の製品名は、その下で動く仕組みを今も言い表しています。閲覧中に違反を指摘するブラウザ拡張の Torch、実際の原告を獲得・選別して intake に振り分ける PlaintiffLink、そして事務所ではなく訴訟ファンドや保険会社に販売される underwriting モジュールです。
範囲を示す具体例を 1 つ挙げます。Darrow は過去 1 年間で 103 億ドルの ERISA 関連 exposure を特定し、100 万人を超える制度加入者に影響し、そのうち 77 億ドル、つまり 75% 超が 12 か月以内に実際の係属案件になったと述べています。この転換率こそ、パイロットで問い詰めるべき数字です。それが主張の全体だからです。
価格の実態
公表価格はなく、プラン一覧もなく、self-serve の申し込みもありません。すべての商談はデモから始まります。
構成はハイブリッドです。事務所が求めるカバー範囲に応じたサブスクリプションに、案件数・exposure 数・スキャン実行数に連動した従量課金が乗ります。保険会社が買い手の場合、従量部分は企業スキャン数と対象法分野の数で増えます。
公開されている唯一の数字は調査会社 Sacra のもので、サブスクリプションを弁護士 1 人あたり月 500〜1,000 ドル、年間契約総額を事務所規模と案件量に応じて数万ドルから数百万ドルの範囲としています。Sacra はさらに、通常の SaaS ではない 2 種類の課金にも触れています。他事務所から案件を囲い込むための独占プレミアムと、アリゾナ州の co-counsel 契約を経由する成功報酬のシェアです。これらはベンダー公表値ではなくアナリストの推定です。1 席あたりの幅は桁の目安として扱い、実際の見積りを取ってください。
発注書で詰めるべき点は 3 つです。独占の価格と有効期間、スキャンと exposure の割当量および超過単価、そして自社チームが自力で見つけていたはずの案件にも報酬シェアがかかるのかどうかです。
こんなチームに向く
成功報酬に投じる資本と実働する事業開発機能を持つ原告側の事務所、つまり mass tort、クラスアクション、証券、消費者保護、ERISA などで、制約が「すでに受任した案件をさばくこと」ではなく「受けるに値する案件を見つけること」にある事務所です。訴訟ファンドや保険の引受担当にも合います。彼らは同じ exposure データをテーブルの反対側から買うことになります。
向かないのは、intake の待ち行列がすでに人員の処理能力を超えている場合です。処理のボトルネックの上に案件獲得の支出を重ねても、買えるのは長い行列であって報酬ではありません。単一の顧客関係の中で被告側に立つ場合も同様で、そこでの exposure スキャンは pipeline ではなくコンプライアンス業務です。そして、購買部門がデモ前の公表価格を求める場合も対象外です。公表価格は存在しません。
代替候補と、そちらを選ぶ条件
- EvenUp — 評価額で見て原告側事務所向け最大の AI プラットフォームで、10 億ドル超と報じられています。請求書面、医療時系列、和解分析を土台にしています。受任済み案件をより速く請求書面に変えることが課題なら、こちらです。
- Supio — 人身傷害と mass tort をエンドツーエンドで扱うエージェント型の製品です。intake、時系列、請求書面、案件収支、証言分析まで含みます。案件獲得のレイヤーを別立てにせず、案件ライフサイクル全体を 1 つのシステムで回したいならこちらです。
- Eve — この領域で最も伸びている新規参入です。2025 年 1 月に Andreessen Horowitz 主導で 4,700 万ドルのシリーズ A、続いて 2025 年 9 月に Spark Capital 主導で評価額 10 億ドル超、1 億 300 万ドルを調達し、累計 1 億 6,400 万ドルです。事務所の業務全体を AI 前提で作り直していて、案件獲得はその中の 1 項目にすぎないなら、こちらです。
- Lex Machina と Bloomberg Law — 訴訟分析の既存レイヤーであり、導入実績から見て多くの候補リストにすでに載っている 2 社です。証拠として使える記録データ、裁判官・裁判所の分析、結果の履歴が欲しいならどちらかを選びます。これらは提訴済みの事件がどう動くかを説明します。Darrow が指すのは、まだ提訴されていない事件です。
- mass tort のリード獲得代理店と紹介ネットワーク — Darrow が置き換えようとしている実際の現状です。今四半期に署名済みの委任契約が必要で、署名 1 件あたりのコストで評価されているなら、こちらを選びます。Darrow が売るのはその川上にある案件の筋読みであり、両者は代替というより補完である場合が多いです。
注意点
- 報酬シェアの仕組みは調達上の細部ではなく、弁護士倫理の問題です。 Sacra は Darrow の成功報酬シェアを、米国の大半の州で有効な fee-sharing 規制と衝突するものと評しています。ABA の Model Rule 5.4 は非弁護士との報酬分配を禁じており、2021 年に alternative business structures 制度でその禁止を外した例外的な法域がアリゾナ州です。co-counsel の経路がアリゾナを通るのはまさにそのためです。ガード: 報酬シェアや co-counsel の条項は、署名前に自社の倫理顧問と所属弁護士会の規則に必ずかけてください。あわせて純粋なサブスクリプションのみの見積りを別途取り、シェアを断っても製品は買えるようにしておきます。
- 見出しになる指標はすべてベンダー提供です。 検知した 220 億ドルの exposure、月間 500 万件のシグナル、80 を超える組織、ERISA の転換率、いずれも Darrow のマーケティング数値であり、独立した監査は受けていません。ガード: パイロットは、すでに断った案件やすでに扱った案件で組んでください。プラットフォームにブラインドで評価させ、損害見積りと和解期間の予測を実際の結果と突き合わせます。
- 競争の激化はシグナルそのものの価値を削ります。 複数の案件獲得プラットフォームが同じ被告の行為を競合事務所に提示すれば、その案件は混み合い、どの事務所にとっても価値が下がります。これはアナリストがこの分類に対して指摘する構造的リスクであり、独占価格が存在するのもまさにこの理由です。ガード: 独占条項は好意ではなく価格の付いた交渉対象として扱い、対象範囲を書面で求めてください。どの被告か、どの請求か、どれだけの期間か。
- 連携まわりの公開情報は薄いです。 API ドキュメントの公開はなく、MCP サーバーもありません。案件管理システムとの連携については、レガシー環境に対して手作業の回避策が要るという報告があります。ガード: デモの場で自社の案件管理システム名、Filevine、Clio、Litify などを挙げ、intake への引き渡しを説明ではなく実演で見せてもらってください。CSV エクスポートで済ませているなら、それを回す人員を計画に入れます。
- この経済性は、見つけた案件を自分で資金手当てできることを前提にしています。 資金供給の速度を超えて獲得された成功報酬型ポートフォリオは、制約を資本へ移すだけです。ガード: 署名前に、プラットフォームが生むと見込む案件量の資金所要額をモデル化し、同じ四半期のうちに資金枠を確保してください。